マリンスポーツと歯科疾患 |
これからの季節、マリンスポーツをする方が増えてくると思います。真冬でも、潜っている方もいるようですが、水の温度が少し緩み始めてからはじめる方が多いと思います。
このような、季節、期間が限定されている(している)時に行うこと(マリンスポーツに限りません)には、歯科疾患に限らず自分の体調、体力を十分把握しておく必要があります。
ここでは、主にダイビングと歯もしくは歯科に関連する注意事項を紹介します。「ほかのマリンスポーツはどうなの?」といった疑問があるかもしれませんが歯科疾患と関連してくるマリンスポーツの大きな特徴として「水圧」があります。(余談ですがスカイダイビングも気圧が関係するスポーツですね)この圧力により普段無症状であるところが痛んだりする事があります。
高度&深度 | 絶対気圧 | 圧力 | 容積 |
高度5500m | 1/2気圧 | 0.5Kg/cu | 2 (200%) |
海面 | 1気圧 | 1Kg/cu | 1 (100%) |
水深10m | 2気圧 | 2Kg/cu | 1/2( 50%) |
水深20m | 3気圧 | 3Kg/cu | 1/3( 33%) |
水深30m | 4気圧 | 4Kg/cu | 1/4( 25%) |
水深40m | 5気圧 | 5Kg/cu | 1/5( 20%) |
このあたりのことはダイビングの講習を受けた方なら大体の事は、わかっていると思います。もう1回そのときのテキストを紐解いてみることも心からスポーツを楽しむひとつの要素になると思います。
歯科、歯科関連疾患で注意すべきこと
(どのような状態なのかは各項目の説明を参照してください)
ムシ歯
ムシ歯そのものがダイビングに影響する事はほとんどありませんがいくつか注意したいことがあります。
ムシ歯のない状態 詰め物がしっかり 入って いてムシ歯 の心配は無い |
詰め物の縁から ムシ歯 になってきて 詰め物と 歯の間に 隙間が できている |
ムシ歯のない状態 かぶせ物がしっかり 入っている |
ムシ歯などの原因に よりかぶせ物の中で 空洞を作っている |
このような状態だと水圧により空洞にスクイズ(圧力による締め付け)を起こしそれにより痛む事があります。この痛みは歯の神経に作用して起こります。
歯の「根」に関係すること
根の状態は自分自身ではわからない事がほとんどです。(無症状で経過する事が多いのです)
だからこそ普段から注意する必要が出てきます。
根の治療途中で 仮詰をして根の中に 薬が入っているが 空洞に相当する 「炎症」の部分も 空洞に相当する |
ムシ歯がかなり進み 神経が死んでいる 状態 この部分も歯の 硬組織 から見ると 空洞である |
左図の状態に加えて さらに根の先に 炎症がある 歯の中と、骨の中に 空洞が存在している ということ |
歯は崩壊している
ので 歯の中の空洞は 開放 されている状態 だが 「根尖病巣」 (炎症)の 部分は 空洞となって いる |
このような状態だと空洞になっていますのでムシ歯のときと同様にスクイズによる痛みが出る事があります。歯の神経は死んでいる、または無い状態ですが、歯の硬い組織の部分(エナメル質、象牙質)からみると神経が入っていたところは空洞となっています。また、根の先に膿がたまっているところは骨の部分が空洞となっています。いずれにしろこれらの空洞が痛みの原因となります。
さし歯
さし歯である事は問題となりませんが、取れかかっている、ぐらぐらしている、というような状態だとマウスピースを噛むときに支障が出る事が考えられます。
また、ダイビング中に取れてしまったら飲み込んでしまう可能性や落としてしまい紛失するといった事も考えられます。いずれにしても、水中の事なので小さなパニックに発展する可能性が出てきます。
歯(の「根」)と 「さし歯」の関係 |
「さし歯」 これが歯の「根」 の中に入っている |
歯槽膿漏
軽度の歯槽膿漏であれば問題はありませんが、咬むと痛い、膿が出ている、歯が動いているなどの症状が出ている状態だとマウスピースを噛むときに支障が出る事が考えられます。
(誤解のないように…口の中の状態として問題がないということではありません)
歯槽膿漏の状態の変化 詳しくは「歯槽膿漏」のページを参照してください |
入れ歯
入れ歯である事が原因でダイビングができない事はありませんが注意したいことがあります。
部分入れ歯でも、総入れ歯でもあてはまります。
さし歯のところでも説明しましたが入れ歯が外れてしまうと誤飲や、脱落して紛失という結果になりかねませんので外れやすい入れ歯には注意が必要です。
噛むと痛んだり、入れ歯の下の歯茎、土手に炎症が起きていたりすると、マウスピースをしっかり噛む事ができません。
部分入れ歯の例 | 総入れ歯の例 |
蓄膿症
歯科では上顎洞炎との言い方が一般的ですが「サイナス(副鼻腔)」のことです。多くは耳鼻科関係の病気から蓄膿症になりますが、歯が原因で蓄膿症になることもあります。
いずれにしろサイナススクイズを起こしやすいので注意が必要です。サイナススクイズは気体の収縮、膨張により起こるので、耳抜きができないときは浅いダイビングでも注意が必要です。
また鼻が詰まっていると耳抜きが困難になったり、リバースブロックが起こりやすく、その結果中耳炎になりやすくなります。
薬
歯科に限らず一般的に眠くなる成分が入っている薬を服用してのダイビングは止めておいたほうが良いでしょう。歯科医院で出される薬のなかでは鎮痛剤に眠くなる成分が入っています。いずれにしろ、薬に頼らなくてはならない体調のときはダイビングは止めておいたほうが良いでしょう。
ダイビングとは直接関係ありませんが鎮痛剤の主な副作用は下記のようなことがありえます。
冷汗、呼吸困難、四肢冷却、四肢しびれ、血圧低下、etc
以上簡単にまとめてみましたが、とくに歯の「根」に関する処置は思いのほか時間や、回数がかかることがあります。
いずれにせよ定期的な歯科検診を受けてからダイビングに臨むようにしたほうがよいでしょう。